手横編み機の〈白田のカシミヤ〉
これまで、これから。
有限会社シラタは、カシミヤ製品の企画・小売業として
1993年に創業しました。
国内生産が主流だったニット製品は
中国などの海外製品に代替していく時代の流れにありました。
シラタも、当初は他社と同じように
社内企画したものを中国で生産し、
国内で販売していました。
そんな中、現二代目に、あるお話が舞い込みます。
現二代目がシラタに入社する以前、
6年間の修業をさせていただいたニット工場。
閉業することになったその工場を
引き継ぐ気はないだろうか、と打診があったのです。
手横編み機によって一枚一枚、手しごとでニットが作られる、
国内ではもう数少ない、古き良き職人の技術がまだ残されている工場です。
「優れた職人にしかできない、ニット製造の技術を残したい」
「何より、手しごとの深みあるカシミヤニットの魅力を伝えたい」
現二代目はそのような想いから、
2006年、その工場を有限会社シラタとして引き継ぎ、
製造を内製化しました。
それから5年、下請け企業として奔走する中、
次の契機となったのは2011年の東日本大震災でした。
未曾有の大災害に、シラタも被災。
工場自体は大きな被害を免れたものの、
震災前から下火となりつつあった受注は、
震災後にはほぼ無くなってしまいました。
そこで、下請製造を一転させ、
自社での一貫生産・販売を行う、
自社ブランド〈白田のカシミヤ〉を立ち上げました。
2011年11月に、全国での販売会と受注生産をスタート。
併せて、自社でのメンテナンスサービスも開始しました。
その後、ニット製造の技術を活かした夏向け麻ニットのライン、
〈白田のリネン〉も仲間に加わります。
日々、全国での販売会を重ね、
シラタの製品をご愛用くださるお客様との触れ合いにより
会社のあり方も、シラタの製品も、たくましく成長してきました。
メンテナンスサービスは特に大きく発展し、
現在では1シーズンに400~500枚のニットが
メンテナンスのため工場に届けられます。
生産から、末長く着ていただけるためのメンテナンスまで。
気持ちよくお付き合いいただけるように、
日々、臨機応変な成長を目指しています。
シラタでは、
20代、30代の若手職人も合計4名、活躍中です。
手横編み機を使用する工場は
国内で数社しかないといわれる現在、
若手育成にも積極的に取り組み、
技術継承にも貢献しています。
※シラタは有限会社シラタの略です。
人の手の力を信じて。
「手しごと」の手横編み機にこだわる理由。
〈白田のカシミヤ〉〈白田のリネン〉で使用している手横編み機。
機械ではありますが、目の増減、柄、糸の配色、
編む作業は全て手作業で行います。
自動の編み機による製品と比べて、編み目も均一で美しく、
やわらかな質感を生み出せることが最大の魅力です。
編み手の技術次第で
編み目をぎゅっと詰まらせて編む「度詰(どづめ)」や、
編み目をゆるく編む「度甘(どあま)」といった
幅広い表情の編み地も可能となります。
東日本大震災を通して、あらためて、
ものの大切さ、命の大切さを考える日々を過ごしました。
下請けを続けても、
受注が激減した今では、この先の存続も難しい。
それでも、手横編み機のこの工場を続けていきたい。
こんなに価値のある技術を理解して、
求めてくれる人もいるのではないだろうか…
自社ブランドによって、
直接お客様と触れ合う機会があれば
手横編み機の素晴らしさをたくさんの方に
知ってもらうことができるのではないだろうか…
そんな想いから立ち上げた〈白田のカシミヤ〉。
ブランド設立から9年をかけて、
少しずつ、地道に「手横編み機を知っていただく」
全国行脚を続けてきました。
ブランド設立と同時にメンテナンスサービスを開始し、
ニットという製品を通して、
お客様と「日々の生活」に関わる「時間」を共有してきました。
人と人が通じ合い、つながり、生きてゆくことができるのは、
人の手、人の言葉、人の温かみ、
そんな、人間の原点といえるものたちが支えてくれるからなのだと思います。
人の手が触れるものが、かたちになり、仕事になり、
人と人の繋がりを育んでくれる。
そう信じて、
日々、製品作りに専念しております。
度詰:ずっしりと重みのある編み地。暖かさは抜群。
度甘:ふんわりと軽やかな編み地。気軽に着られることが魅力。